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商標登録における代理人の選択方法

医療や建築業と同じように、同じ商標、同じ発明であっても、特許事務所や代理人(弁理士)によって生まれてくる知的財産は大きく異なります。それは、特許事務所ごとの文化・風土、代理人それぞれの知的財産業務に対する姿勢、クライアントへの方針などが、各々の特許事務所や代理人によって大きく異なることが原因です。 訴訟のように、代理人の変更によって裁判の結論までが大きく変わることが往々にしてあります。

しかしながら、知的財産の世界では、医療や建築業と異なり、大きな問題があったことが出願後に判明したとしても、そのことがニュースとなるようなケースは国内ではまずありません。侵害事件の当事者にでもならないと代理人の良し悪しはつかめません。 現状では、特許事務所や代理人に関する情報は不足していたとしても、厳しいように思われるかもしれませんが、特許事務所や代理人の選択は依頼人の責任においてのみ行われることになります。

このような状況の中で適切な代理人(特許事務所)を探し当てるのは難しいと思います。ここでは、商標登録出願について特許事務所(代理人)選択のポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

商標登録出願において、保護する内容は、 (1)商標を使用する商品・サービス(指定商品・指定役務といいます。)と、(2)その商標の形態との2点で決まります。したがって、この2点を、どのようにして決めているのかが選択の大きなポイントになります。

例えば、ある会社がコンピュータソフトウェアの開発・販売を予定しており、その会社の会社名を商標登録で保護しようとする場合、多くはケースでは、依頼人は、単に、コンピュータソフトウェアの製品そのものに関する指定商品・指定役務を選択してしまいます。

しかし、実際には、コンピュータソフトウェアの製品販売時には、マニュアルや、関連書籍に会社名、ロゴを付すことが多いため、コンピュータソフトウェアの製品そのものだけに関する指定商品・指定役務を依頼人の言われるままに選択したのでは、保護に大きな抜け穴が開いてしまうことになります。また、その会社が、コンピュータソフトウェアに関するセミナーを行うような場合には、別の大きな抜け穴がさらに開いていることになります。

商標の形態を決定することも難しい問題です。ロゴマークや変わった印象を与えるようなデザインなどを文字からなる商標に加えて出願すれば、他の商標と類似しにくくなるため、商標権を取得することだけを考えれば有利になります。

しかしながら、ロゴマークや変わった印象を与えるようなデザインなどを加えて他の商標と類似しにくくしたことが、逆に、他者から見れば、模倣しても商標権の侵害が起こりにくい状況を生み出し、他者が文字部分だけに近い商標を自由に使用したり、他の商標を出願して登録してしまう原因にもなります。

依頼人の言われるままに出願書類を簡単に作成することは一見よいように思われるかもしれませんが、商標権の存続期間は永久となり得ることからも長い目で見ればたいへん大きな危険性が生じるケースが多くあります。

したがって、出願書面の内容だけでなく、依頼人と意思疎通をどのようにして図りながら出願手続を進めているか特許事務所選択の上では重要なポイントになります。

商標保護で完全を期すことの難しさの一端はご理解いただけたのではないかと思います。

 

アーウェル国際特許事務所でも完全な出願手続ができているとは決して考えていません。少しでもいい商標保護ができるように、依頼人との意思疎通を工夫しながら行い、1件ずつハンドメイドの商標登録出願を行っています。